酸性雨で屋根が溶け、雨漏りが発生する?
1980年代から1990年代にかけて、酸性雨が環境や建物に与える影響が注目され、環境省(当時は環境庁)が酸性雨モニタリングネットワークを構築して全国的な酸性雨の測定や調査を実施しました。
この調査結果は、酸性雨が各地の森林衰退や水質悪化などと関係があることを示し、社会的な問題として議論されるようになりました。酸性雨に対する日本国内の取り組みの一環として、工場や発電所からの排出ガス規制が強化され、車両の排ガス規制も進みました。また、日中韓を含む東アジア諸国は共同で酸性雨の観測を行うなど(東アジア酸性雨モニタリングネットワーク)、国際的な協力も進められました。
さて、この酸性雨ですが、お家にどのような影響をもたらすでしょうか。特に影響を受けるのは雨に晒される屋根や外壁であることは言うまでもありません。
金属製の屋根、特に鉄や亜鉛を含むものは酸性雨によって化学反応を起こしやすく、錆びや腐食が進みやすくなります。腐食が進行すると、屋根材が薄くなり、強度が低下し、漏水などの原因にもつながります。これにより、屋根の耐用年数が短くなり、早期の補修や交換が必要となる可能性が高まります。
瓦屋根についても、問題となる場合があります。瓦は比較的酸性雨に強いと言われていますが、谷コイルと呼ばれる屋根の谷間で雨水を雨樋に流すために敷かれる金属板は”銅製”のことが多く、腐食が発生します。
このように谷コイルの被膜が腐食することによって剥がれ出し、周辺のシーリングにも隙間が出来たりすると雨漏りが発生することになります。
本事例は、谷コイルを修繕することで、雨漏りを改善した事例です。
銅製の谷コイルが酸性雨で真っ黒になった修繕前
写真中央部の谷間の部分が、真っ黒になっていることが分かります。サビらしきものも浮き出ています。これは、谷コイルが酸性雨によって化学反応を起こし、黒くなった状態です。
このような状況では当然に、雨漏りの可能性が高まりますが。金属板(銅)から金属が溶出している状況も環境への影響を考えると、問題と言えます。
研究によると、降水量およびpHが金属溶出量に強く関わることが分かっており、大気汚染が進んでいる地域や降水量の多い地域は、雨漏りの危険性と金属溶出の危険性が高くなると言えます。
耐酸被膜鋼板の谷コイルで屋根を守る
酸性雨による谷コイルの腐食を防ぐためには、近年開発された耐酸被膜鋼板を活用することが有効です。本事例では、上記のように耐酸被膜鋼板の谷コイルを活用して、谷を覆っています。
雨漏りの解消と環境負荷の改善へ
屋根は常に目にする部分ではないため、雨漏りなどが起きないと、なかなか意識しない部分ではあります。
しかし、酸性雨の問題は依然として続いており、それが雨漏りや環境負荷につながる可能性があることは認識しておく必要があるのではないでしょうか。
上記のように、近年ではようやく耐酸被膜鋼板など技術的に優れた資材が市場に出回るようになりました。これを機に、屋根コイルをチェックしてみても良いかもしれません。