室温は健康に影響を与えます
国土交通省による調査結果
国土交通省が発表した「住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する調査の中間報告」によると、断熱改修前と断熱改修後を調査した結果、”得られつつある知見”として、以下の項目が挙げられています。
- 冬季において起床時室温が低いほど、血圧が高くなる傾向がある
- 高齢者ほど室温低下による血圧の上昇が大きい
- 断熱改修によって室温が上昇し、それに伴い居住者の血圧も低下する
- 居間または脱衣所の平均室温が18℃未満の住宅では、入浴事故リスクが高いとされる熱め入浴をする確率が有意に高い。
起床時室温と血圧の関係
まず、(1)についてですが、室温が10℃低い朝は血圧が7.3 mmHg 高いという結果が出ています。これは高齢者になるほど顕著で、+10歳になると血圧が8.8mmHgになるという結果が出ています。寒くなると体中に血液を回すために血圧が上昇するということだと思われますが、血圧が上昇することで動脈硬化、脳卒中・脳疾患、心疾患等の疾病リスクが高まると言われており、改めて室温維持に目を向ける必要がありそうです。
年齢、室温と血圧上昇の関係
次に、(2)についてですが、20代から80代以上の各年代の室温による血圧の上昇感受性をみると、年齢が上がるとともに、室温低下による血圧の上昇量が多い(ほぼ右肩上がり)という結果が出ています。つまり、高齢者になればなるほど室温が下がると血圧が上昇するということになります。
断熱改修により血圧が低下
(3)ですが、どのような断熱改修をするかによりますが、この調査では断熱改修により室温が平均3.3度上昇したとのこと、人間の体で考えると、35度と38.3度には大きな違いがあることが分かるように、3.3度の室温上昇により、血圧の低下がみられます。つまり、断熱改修→室温上昇→血圧低下が裏付けられたということになります。
寒いと熱いお風呂に入りたくなるが、リスクも増す
(4)では、体を温めようとして自らお湯の温度を上げ、入浴事故のリスクを高めているということが示唆されています。入浴事故としてはヒートショックがありますが、ヒートショックは急激な温度変化により、血圧が下がり、脳に血流が不足して起こると言われています。自らリスクを招いているとしたらこれほど悲しいことはありません。
断熱改修は健康を守るため
このように、室温が血圧に与える影響が明らかになりつつあり、今後健やかに暮らしていくためには、血圧上昇を軽減・回避することが必要になると言えます。
まずは、適切な運動により体温を維持したり、塩分を控えて通常の血圧を低く抑えておくことが必要です。
また、しっかりと厚着をして過ごすことも必要でしょう。そして、エアコンやストーブを活用して部屋の温度を上げることが必要です。脱衣場にも最低でも電気ストーブ等を設置するのが望ましいでしょう。お風呂の温度を38度程度にしておくことも重要です。ただし、これらはある意味対処療法であり、気疲れすることもあるでしょう。根本的な解決策としては家屋自体の断熱性能を上げることです。従って、冬場とその他の季節の気温差が大きいような地域では特に、断熱改修を行うことが望ましいと言えるでしょう。
そもそも断熱改修とは
断熱改修でポピュラーなものに脱衣所にヒーターを取り付けたり、断熱材で包まれたヒーター付きのユニットバスを導入するというものがあります。これは、冬場にお風呂場が寒いという方が多く、ヒートショックのリスクも喧伝されていることから、まず最初に行うことが多い断熱改修となります。
また、壁、床、天井に断熱材を入れることで家屋全体を断熱改修するという方法もあります。費用もかかりますが最も効果が高い断熱改修と言えるでしょう。