例えば30坪の土地に一般的な注文住宅を建てた場合、工事費用は1,500~2,500万円となりますが、一方で「ローコスト住宅」と言われる住宅の場合、工事費用は1,000~1,500万円となります。
このように非常に低価格なローコスト住宅ですが、
- 本当に1,000万円台で家は建てられるのか?
- なぜ1,000万円台で建てられるのか?裏はないのか、デメリットはないのか?
と疑問に思う方も多いと思います。
今回は、1,000万円台で注文住宅を建てるポイントについて説明していきたいと思います。
目次
注文住宅に必要な諸経費
まず、そもそも注文住宅を建てるにあたって必要となる費用を振り返っていきたいと思います。
土地購入費
相続などで既に土地を所有している場合は、この費用は抜いて予算が立てられることになりますが、何はともあれ土地がないことにははじまりません。
注文住宅を建てる上で、この土地購入費が予算を大きく左右します。
都内など大都市の中心付近に土地を買うとなると、土地自体の費用がかなり高額となり、建築費を削減せざるを得ない状況になることが予想されます。
一方で土地が安すぎても、埋め立て地や低地など、地盤が弱かったりハザードマップの危険エリア内であるケースもあります。
今後長く住む場所になります。周辺の治安や子育て環境、様々な角度から住みやすい場所を選んで土地探しをすることをおすすめします。
建築費
ローコスト住宅について書いた通り、依頼する業者によって建築費の坪単価に差が出ます。
まずは土地を確保して、その上にどれくらいの価格の建物を建てられるかを計算しましょう。
一般的に建築費が高めに設定されているのが大手ハウスメーカー、お手頃価格に抑えられているのが中小、工務店です。
建築事務所は独自のルートで設備費などを抑えられるケースもありますが、施工業者と別会社となっている場合は、それぞれが利益を乗せるため、建築費全体としては割高になりがちです。
従って、建築事務所と施工会社が一体となった会社がワンストップで対応する方がローコストで済みます。
諸経費
物件の購入自体が初めての方にとって意外な落とし穴がこの諸経費です。
印紙税、不動産取得税、登録免許税、司法書士報酬、固定資産税精算金といったものがかかります。
ローンを組む場合はローン保証料なども発生します。また、火災保険に加入するのに保険料の前払いも必要になります。
注文住宅の場合、物件価格の3~6%が諸経費として必要であると認識しておきましょう。
1,000万円台の住宅を実現する一般的な3つのコストダウン
低価格で注文住宅を建てることが出来るポイントは3つのコストダウンにあります。
①材料費
ローコスト住宅を建てる会社は、建材や設備を大量発注することで仕入れコストダウンを実現しています。
そのため建材や設備のグレードは統一、規格化されているのが特徴です。その分、こだわる余地がなくなりますが、そこは我慢する他ないでしょう。
②人件費
材料を規格化することで建設工事が複雑ではなくなり、「熟練工」と呼ばれる高い技術を持った方を多く集める必要がなくなり、人件費の削減が可能になります。
③広告宣伝費
テレビCMやチラシなどにかけるコストを削ることで、住宅の建設費の削減をしています。
安い坪単価にはトリックがある
坪単価30万円!と聞くと、いかにも安く見えますが、実はこれはトリックの場合があります。
なぜならば、坪単価はそう簡単に下げられるものではなく、これが低すぎると、ハウスメーカーとしては人件費や諸経費がまかなえず、倒産してしまうからです。
ですから、何らかの方法で低く見せている場合が多くあります。
本来坪単価の計算式は、建築費用÷延床面積です。
しかし、会社によっては、延床面積を施工床面積にすり替えているケースがあります。
建築法上では延床面積に含まれない以下のものが、
- 玄関ポーチ
- ビルトインガレージ(車庫)
- 地下室
- ロフト
- ベランダ・バルコニー
施行床面積では含めることができます。
こうすることで、分母を大きくすることができるため、坪単価が低くなるのです。
また、注文住宅を建てる際には塀や庭などの外構工事も必要となりますが、計算上ではお家の建築費用には含みません。
つまり、実際にお金がかかっていても、分子には含まれないことになり、結果的に坪単価が低くなります。
ですから、1,000万円代で注文住宅を建てる場合は、坪単価はあくまでも参考程度にとどめ、やはり予算総額で考える必要があります。
ローコスト住宅のデメリット
コストを抑えて注文住宅を建てることが出来るローコスト住宅ですが、デメリットもあります。
例えば、上で書いた通り建材や設備のグレードが統一、規格化されているため、選べるものが限定されてしまいます。
注文住宅ならではの自由度には制限がかかってしまうのです。
また、会社によっては、住宅の保証期間が短いこともあります。
「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)では、新築住宅に対する瑕疵担保責任の期間を目的物の引渡しの日から10年以上としていますが、この10年ギリギリの保証しかしないケースもあります。
1,000万円台の注文住宅を建てるために妥協するポイント
上記は主に、ハウスメーカー側の事情を書きましたが、施主様の方で工夫や妥協をするポイントがあります。
こだわりポイントを明確に
床には無垢材を使いたい、キッチンは最新のシステムキッチン、床暖房も入れて、収納スペースもたくさん作りたい…など、やりたいことを思い浮かべると正直キリがありません。
我が家も一時注文住宅を検討した時期がありましたが、私の叶えたい希望が多すぎる上に、主人の希望と意見が折り合わない点も多く計画が頓挫してしまった苦い経験があります。
ではどうすればコストを抑えることが出来るのでしょうか。
私の失敗から言えることはズバリ、「お金をかける場所と、かけない場所のメリハリ」です。
自分たちがこだわりたいのはどこなのか、逆にあまりこだわらずに安く抑えたい場所はどこなのかを考えてみてください。
例えば我が家の場合、いろんな希望はありました。しかし今考えると、結局こだわりたかったのは家族で過ごすリビングと庭に重きを置けばよかったのだと思います。
リビングの床材は最後までこだわっていた無垢材で貫き通し、庭につながる窓は大きくリビングとつながりを感じるスペースを演出、子供たちがリビング学習をするにも十分なスペースを確保。
一方寝室の床材や壁紙にこだわる必要もなし、子供が一定大きくなれば和室も必要ない、お風呂掃除も得意ではないからシンプルでいい、料理が大好きというわけでもないのでキッチンも価格を抑えたもので十分でした。
このようにこだわりポイントと気にしないポイントを丁寧に洗い出すことで、注文住宅の建築コストは押さえることが可能なのです。
まずは、ご夫婦、ご家族で、譲れないこだわりポイントと、そこまでこだわる必要がないポイントについて、しっかりと話し合いをすることをおすすめします。
それがコストを抑えるための大切な第一歩です。
コストを抑えられる箇所を把握する
こだわりポイントとそうでない場所が明確になったら、次にコストを抑える具体的な方法をイメージしましょう。
コストを抑えることが可能な代表的な例をご紹介します。
お家の形はシンプルがベスト
建物の外観、間取り、どちらをとってもシンプルが一番コストを抑えられる上、生活がしやすくなります。
例えば、建物の形自体はシンプルに箱型。外壁に凹凸がない分、外壁の面積が少なくなるので建材も少なく済み、作業工程もシンプルです。
また、平屋の場合は基礎や屋根が広くなってしまうため割高、3階建ての場合は重さを支えるために、安全上建材の強度を上げる必要があるため割高になります。
床面積も確実に確保でき、余分な建材費がかからない2階建てがベストです。
間取りについては、部屋数は無駄に増やさないことをおすすめします。
部屋数を確保したいと考える方のほとんどに、お子さんの人数が共通していると思います。
我が家の場合は男の子2人で同性のため、部屋自体は一室、将来的に可動式の間仕切りで仕切る形でプライベート空間を確保しようと考えています。
お子さんの人数や性別によって考え方は変わると思いますが、部屋数を増やせば壁面積が大きくなります。
その分やはり建材費がかかってしまうため、部屋数を抑え将来的に変更可能な間取りを考えることが、コスト削減につながるでしょう。
また、水周り(キッチン、トイレ、お風呂、洗面所)の配置はなるべく近くすることで、配管が短く少なくなるのでコストダウンします。
家事導線を考えても、水周りが近くに集中していることはメリットです。
建材や設備も工夫とメリハリを
部屋中の壁に貼るクロスもピンキリです。消臭機能や防汚機能など質の高いものは価格も高くなります。
経験上、子供が活動する部屋では壁紙は汚れる、破れるリスクがつきものです。
あまり高いものを選ばず、量産されているものを選べば、コストを抑えられるだけでなく将来的に張り替える可能性を考えても安心です。
また、キッチンやトイレなどの設備もコストダウンポイントです。
最新のものはどうしても価格が高くなります。最新にこだわらないのであれば、型落ちのモデルと選ぶのがオススメです。
値引きしてもらえる可能性もありますので、交渉してみましょう。
業者によってはメーカーとの独自のルートを持っていて、安く設備を調達できる可能性もありますので確認してみると良いでしょう。
これらのコスト削減ポイントを知っていると知っていないでは、大違いです。
残念ながら丁寧で親身になってくれる業者ばかりとは言えないため、自分たちのこだわりと、価格を抑えたいポイントを明確にした上で業者とやり取りをすることをおすすめします。
1,000万円台の家は建坪の妥協も重要
単純計算すると、建築費用=坪単価×建坪ですから、建坪が小さい方が建築費用は少なくて済みます。
特に都市部では、上限ギリギリの広さで家を建てようとするものですが、上記したように坪単価は基本的に下げることは難しいため、建坪で妥協するのがセオリーです。
実際に1,000万円台で建てられた注文住宅の多くは、建坪の少ないやや手狭な住宅です。
ただし、ここが難しいところですが、建坪を小さくしても、比例して建築費用が下がる訳ではなく、緩やかに下がっていくということになります。
これは、狭くすれば狭いほど建築の難易度が上がったり、場合によっては職人の工数自体はあまり変わらないからです。