地震は日本で頻繁に発生する自然災害の一つであり、これまで多くの建物倒壊の被害をもたらしてきました。
平成8年以降では以下のような被害が起きていることは、記憶に新しいところです(出典:気象庁|日本付近で発生した主な被害地震から筆者抜粋)。
発生年月日 | 震央地名・地震名 | M | 物的被害 |
令和6年(2024年)1月1日 | 石川県能登地方 令和6年能登半島地震 |
7.6 | 住家全壊 8,789棟 住家半壊 18,813棟 住家一部破損 83,154棟など |
令和5年(2023年)5月5日 | 石川県能登地方 | 5.9、6.5 | 住家全壊 30棟 住家半壊 169棟 住家一部破損 535棟など |
令和4年(2022年)3月16日 | 福島県沖 | 7.4 | 住家全壊 217棟 住家半壊 4,556棟 住家一部破損 52,162棟など |
令和3年(2021年)2月13日 | 福島県沖 | 7.3 | 住家全壊 69棟 住家半壊 729棟 住家一部破損 19758棟など |
平成30年(2018年)9月6日 | 胆振地方中東部 平成30年北海道胆振東部地震 |
6.7 | 住家全壊 469棟 住家半壊 1,660棟 住家一部破損 13,849棟など |
平成30年(2018年)6月18日 | 大阪府北部 | 6.1 | 住家全壊 21棟 住家半壊 483棟 住家一部破損 61,266棟など |
平成30年(2018年)4月9日 | 島根県西部 | 6.1 | 住家全壊 16棟 住家半壊 58棟 住家一部破損 556棟など |
この記事では、住宅の専門家として、地震で倒壊する家の特徴や対処方法をご紹介しますので、ぜひ参考にしていただだけると幸いです。
目次
地震で倒壊する危険性の高い家の特徴とは
1981年以前の建築基準法改正前に建てられた家(旧耐震基準)
1978年に発生した宮城県沖地震では、マグニチュード7.4を記録し、甚大な被害をもたらしました。特に、木造家屋や古い建物が多数倒壊し、多くの死傷者や建物の損壊を引き起こしました。
これをきっかけとして1981年に建築基準法が改正されることになりましたが、厳格化されたポイントは以下の通りです。
- 耐震設計
- 耐力壁(水平向力に対抗する壁)の配置
- 構造計算の厳格化
- 基礎構造の強化
現代の常識から言えば、これは当たり前に見えますが、旧基準の建物には「壁の中に筋交いがない」という事例が至る所にあり、それだけいい加減に住宅が作られていたとも言えます。
建築基準法改正以前に建てられた物件はいわゆる「旧耐震基準」、それ以降は「新耐震基準」として区別されます。
1995年に起きた阪神淡路大震災において被害が集中していたのは、旧耐震基準の建物だったと言われています。
なお、新築住宅の耐震性能を表す基準である「耐震等級」が設置されたのは2000年になってからです。
シロアリ被害のある家
シロアリによる被害が進行している家は、構造が弱くなり、地震時に倒壊するリスクが高まります。
柱や梁に空洞音がする、天井の変色、羽アリの発生などの兆候が見られた場合は要注意のサインです。
風通しが良く大きな吹き抜けがある家
あくまで一般論ですが、柱や壁が少なく開口部が多い家は、構造が弱くなりがちです。また、大きな吹き抜けは上階への揺れを伝えやすく、耐震性が低下します。
こういったスタイルの家は多くあり、耐震等級を満たす家屋も多くありますので、全ての家がそうであるという訳ではありませんので、一つのチェックポイントとしてみて貰えればと思います。
瓦屋根の家
根材が重いことで、建物の揺れが大きくなりやすく、家の耐震性に影響すると言われます。
従って、瓦屋根の場合は、ガルバリウム鋼板などのストレート屋根と比べて、耐震性が低い可能性があります。
しかし、骨組みや構造も耐震性能に大きく影響する要因ですので、重い屋根に耐えられるだけの躯体の強さがあれば、耐震性能は保たれるとも言えます。
また、定期的なメンテナンスがなされておらず、屋根が老朽化している場合は、当然にリスクが高まりますし、大回し工法と言って棟瓦や桟瓦と葺き土を銅線で固定する古い工法の場合もリスクは高まります。
一方、現在では、30年程度ノーメンテナンスで保てることができ、従来の約50%も軽量化された「防災瓦」が使われるようになってきていますので、リスクは低下しています。
柱や壁の配置が偏っている家
耐力壁や柱の配置が不均一であると、揺れが部分的に集中しやすくなります。特に1階と2階の耐力壁の位置が一致しない「直下率」が低い家は、耐震性に問題が生じやすいと言われています。
複雑な形状の家
L字型やH字型など複雑な形状の家は、シンプルな正方形や長方形の家に比べて地震に対する耐性が低くなります。角や曲がり部分が弱点となりやすいため、設計段階での対策が重要です。
地震に備えるための対策とは
耐震補強の実施
耐震診断を受け、必要に応じて耐震補強を行うことが基本です。特に1981年以前に建てられた家や、シロアリ被害が見られる家は、早急な対応が求められます。最新の耐震基準に基づくリフォームを検討しましょう。
避難場所と経路の確認
災害時に備えて、地域の指定避難場所を確認しておきましょう。また、複数の避難経路を設定し、家族全員で共有しておくことが大切です。
安否確認の方法を決める
災害時は通信が混雑することが予想されます。災害用伝言板やSNSを活用した安否確認方法を事前に決めておくと安心です。家族全員で連絡手段を確認しておきましょう。
家具の固定と防災グッズの準備
家具の転倒防止や落下物対策を行い、防災グッズ(非常食、水、救急セットなど)を備えておきましょう。家具の固定には、専用の固定具やストラップを使用すると効果的です。
地震発生時の初動対応を考える
揺れが収まるまで安全確保
地震が発生したら、まずは身の安全を確保します。テーブルの下に隠れるなど、落下物から身を守ることが重要です。
避難時の注意点
揺れが収まったら、速やかに避難経路に沿って安全な場所へ移動します。家族や隣人と声を掛け合い、助け合うことが大切です。
情報収集と連絡
避難場所に到着後は、ラジオやSNSで最新の情報を収集し、家族や親しい人に安否を知らせましょう。
まとめ
地震に対する備えは、家の構造と日常の準備の両面からアプローチすることが重要です。
築年数の古い家やシロアリ被害のある家など、地震に弱い特徴が見られる場合は、早急な対策が望まれます。
また、家族全員で避難場所や経路を確認し、非常時の安否確認方法を話し合っておくことも重要です。